Works2025.07.04

なぜ、インタビュープログラムをスタートするのか、
理由を考えて書いてみました。

なぜ、インタビュープログラムをスタートするのか (理由)

私たちは、仕事もプロジェクトも社会も自分たちの手で作っている

 

忘れがちなのだけど、今、選んでいる仕事も環境も関わるコミュニティもかつての自分が選んだ道の延長にある。入社したり転職したり、起業したり、結婚や出産をして復帰したり、移住したり開業したり。人生の状況は目まぐるしく変化する。どんな人にもその人に配られたカードの条件や事情があって、家族や仲間と折り合いをつけながら、どのカードを使おうかと考える。自身が置かれた環境を活かし、目標や夢を実現する。当たり前すぎる話かもしれないけれど、その物語はどれも異なる。

ふとした時に、私たちが仕事を通して知り合った人たちの顔が浮かぶ時がある。福島県の行政マンの彼はどうしているかな、お母さんたちは子育て頑張ってるかな。広島県で農業に勤しむ彼は何をしているかな。京都の作家の彼女は創っているかな、と。彼らは人生に「ただ参加」していない。社会に「たまたま貢献」しているわけでもない。「結果的に」文化を作り出しているのでもない。意志を持って、自分たちの手で仕事や作品を作り出している。

2017年8月、当時お仕事で通っていた福島県須賀川市の牡丹園にて、母親たちの声を取材した時の様子

 

私たちには「仕事をする」という手段を通じて、多くの魅力的な人に出合いたいという思いがある。一緒に仕事をする間柄になると、その人の考え方や行動の癖に触れることになり、そこそこに良い距離感で付き合う知人や友人とは違う関係性が生まれる。せっかく対話をするのだから、少し深めに知り合うことになる。互いの人生の大切な時間が真ん中にあり、どちらにとっても、有意義な時間だったと思えるように過ごしたい。

2019年広島県三次市にて、界隈の魅力を創出するための企画を行った時のチラシ

私たちがそのために差し出せる能力を、最近整理してみている。だんだんとスティルウォーターの役割がわかってきた気がしている(今後変化する可能性もある)。今は、誰かが覚醒していく瞬間や、拓かれていく感覚を目の当たりにしたいと思う。チームと呼ばれる集合体が地熱発電し始めるみたいに、もともと潜めていたエネルギーを循環させていきたい。そして、その様子を逃す事なく見届けてみたいなと思うのです。

長くなる話の前に、すでに長くなってしまいましたが、そんな人たちと一緒に仕事がしたいと思っています。

 

クライアント、それぞれの仕事と葛藤。そこにある物語

___美容サロンを営む、KOCHABグループのメンバーと共に、自分たちが作り出したい美容サロンを言語化していくというプロジェクトは、1年以上の作業となって、何度も打ち合わせを繰り返し、数々の言葉が集まって、それを編集していった。ページは21つの章から編まれる壮大なものとなって、一冊の真っ白な本になった。彼らは漫画好きだからと、コミックサイズになった。この中で、とても気に入っているページがある。もちろんその他のページも全て最高なのだけれど。いずれは自分の店を持ちたいと志す美容師さんが多い中で、それでも集まって一緒に働くと決めた人たちは一体どこを目指しているんだろう?というのが長年の問いだった。今も、理想を追いかけているところだけれど、そこには、集うことで高まるエネルギーがあって。お客さん一人と向き合う、一人の人間として、どんな自分でありたいのか、という問いに等しい。人の人生に大きく関わる美容師さんという職業を、私たちは尊敬していて、自分が鏡の前でいつも「素の自分」でいられることが尊いと思っている。成長したい自分も、情けない自分も、綺麗になりたい自分も、頑張りたい自分も、全部丸ごと知っていてくれる場所。友人でも家族でもないその距離感が嬉しくて、そんな、温かい人たち。どんな場所であるべきか。

 

05.    チーム    People First

この人と働いてみたいなと思えることが何よりも大切にしていること。

ただ、優秀なだけでなくバランス感覚があり、

お互いを思いやりそして前向きなマインドを持っていること。

チームで働くために大切なのは何よりも「対話」。

行動には理由がある。

気持ちにはアップダウンもある。

でも、みんなで働くためには秩序と、わきまえが必要。

思いやりは、その2つに支えられている。

技術は後からついてくるけれど人柄はなかなか追い着かない。

チャーミングで、素直なこと。

家族のように、指摘と、称賛ができる仲間。

親友のように、手助けし、時に厳しいことも伝えられる仲間。

(サロンブランディングのお仕事、ブランドブック、社内勉強会、商品開発など)


2024年、美容室「KOCHAB」のブランドブック。企画・編集・執筆した時のもの

 

___コロナ禍からお手伝いさせていただいているギフトカタログカンパニー。2年近くの期間をかけて、スタッフの皆さんにインタビューを重ね、日々の仕事から紡ぎ出した行動指針は9つのアクションにカテゴライズされている。もはや、行動指針の枠を超え、羅針盤のような、憲法のような、今と未来が詰まった言葉。書き上げた時、そしてそれを皆んなで読み合わせた時の感動は忘れられない。その、9アクションが本社の至る所に掲げられていた。写真はその1つのポスターの1枚。600人を超えるスタッフの皆さんの胸ポケットには、このクレドが携えられているというから感動です。届けた言葉を、自分たち自身の言葉にし、愛し、日々の中に落とし込んでくださっている。こんなに嬉しいことはありません。言葉は私たちが書き上げたものですが、皆さん一人ひとりから出てきたエッセンスにより構築されていて、紛れもなくそこで起きていること。そしてそうありたいと言う志し。(ギフトカタログブランドのインナーブランディング、伴うデプスインタビュー、ファイディングスから)
2022年、インナーブランディングのお仕事でブックレットやポスターをお手伝いした時のもの

 

___シェフは話しをしているといつの間にかどんな話も、料理に繋がってゆく。でも一番、中でも忘れられない話があって「僕は料理は回復だと思っているんです。食卓についた人が、僕が作った料理を食べた時に、ひと口、口に入れて、はっとする。それまでお喋りしていたり、会話が続いている食卓に運ばれてきた料理が、目の前に置かれて、なにげなく口に運んだ時のあの、シーンって静まり返る感じ。料理が会話を奪っていく瞬間、そんな時に思うんです、あ、掴んだなって。そして、みんなが笑顔に元気になってゆくんです。その瞬間を作り出したいんですよね、料理でその人を癒して回復させることを」私たちは観察する。シェフの情熱の根源にあるものはなんだろう、背景にある物語はなんだろう、到達したいのはどんな景色なのだろう、と。(フレンチレストランの発信とブランディングのお仕事の所感から)

2024年、フレンチレストランの厨房の皆さん、集合する、も、写真を撮る、も大切なプロセス


2023年、レストランの魅力を一冊のブックレットにまとめることも

 

語られる機会の少ない潜在的に「選び取っている」行動

どの場合でも、そこにある熱量はそのままサービスとして提供される「付加価値」に注がれてゆく。商品、サービス、空間、発信、不動産選び、スタッフィングなどすべてに。シェフの場合だったら全国各地から集まる食材を選ぶ基準に。美容サロンだったらカウンセリングやエントランスに活けられる季節の花にも。ギフトブランドだったら本の装丁に、ラッピングのリボンに。そして、私たちはその事象の中に血が通っていることを感じたり、熱量や意図を感じた瞬間にワクワクする。想いという目に見えないものが、実際に形になって誰かに届くということは、とても時間がかかるし、途中で簡単に立ち消えてしまうものだから。自分自身が目に見えないものを信じた証だし、チームがそのことを信じられたという証だから。

経営者にとっての事業も、表現者にとっての作品も「形にしていく」ということは、簡単ではないこと。想いが細部にまで行き渡り、誰かに伝わった時に初めて人は心が動かされるのだと思う。想いの原動力が力を失うことなく、人びとにしっかり届いていく姿を見たい。そここそ、クリエイションが必要で、それこそが楽しく、その手助けがしたいと、私たちは思っています。


  
2022年8月。青山のスパイラルホールを会場にして海のレシピプロジェクト実行委員会として主催した「海の森、海のいま展」。伝えることとは何か?ひたすら向き合った時間でした(共催:日本財団 海と日本プロジェクト)

 


原動力をもう一度見つめなおす、壁打ちを

レストランにも、映画作品にも、地域創生のプロジェクトにも、紐解いていくとそこに原動力となる想いの原点があって、その上に壮大な考察があり、幾つもの中から選び取る選択があり、決断の繰り返しとしての行動があります。これらは、うまく帆を広げて波に乗っていると気がつかないけれど、ひずみが起きたり、成長の段階に入ったり、風が止んでしまった時に、立ち止まって見渡す必要が出てきます。

想い→考察→選択→決断=行動・・・←点検?

もともと動かされていた原動力はなんだったか。実現するために、意を決して取り入れたことは間違っていなかっただろうか。失敗や不安に直面して見誤ったのではなかったか。達成したかった目標はなんだったか。見たかったのはどんな景色だったか。

自分自身のことはわからないもの。数多の判断を繰り返して今現在の位置に立っている。オーナーや表現者たちは、あまりにも精一杯で、そこで繰り広げられる創造と奮闘を冷静に分析したり、見つめたりする点検の機会が圧倒的に少ないのだろうなと思うのです。


2023年3月「私と向き合う時間」のイベント開催前、三菱地所の皆さんとのひととき。クライアントだけれど、共に長い時間を共有させてもらっているうちに、いつの間にかチームとしての結束力が育ってゆく

 


対話を重ねることで、輪郭をあぶり出してゆく

私たちが惹かれる人たちがいます。それは職種関係なくて、クライアントだったり、プロジェクトオーナーだったり表現者だったりします。ものづくりしている人も多いです。その人たちってどんな人たちだろうと、よく話題にします。彼らは「失礼なことをしない」「市場ばかりをみていないというか全くみていない」「伝えることを乱暴にしない」「信じているものが強すぎるくらい強い」「自分の体験を自分のものさしでちゃんと測っている」「素顔だなと感じさせる」「伝わる人に伝わればいいやと思っている」「苦手なことや失敗も、おいって思うこともあるんだけどなぜか許せる」「いつも探求している」「泣きたいくらい必死」「ユーモアがありチャーミング」「愛に溢れ、そのことを真っ直ぐに言葉にして伝えられる」人、他にも色々あります。

2023年9月。今、どの道をどんな風に歩いているのか対話する時間を持った、岩手県遠野での時間。クイーンズ・メドウに、集まったメンバーと3日間語り合った

 

言葉で説明するのがむずかしい人たち。だけどなぜか歩幅を合わせて、その人が見る世界を覗き込みたくなる。汗をかいて、大きな縄跳びに一緒に飛び込んでみようという気持ちになる。息を合わせて、縄から外へと飛び出そうという気持ちになってしまう。そこには、「仕事を受注する」という簡単な言葉で表せない何かがあって、きっと一緒にやってみたらすごくいいんだろうな、という直感しかない。それは、KPIなどとは異なる独特な指標である。その人たちと対話をして、成すべきことの輪郭を探りたい。そして社会にそれを差し出し、この先も残していくべき大切なものをちゃんと残したい。関わりあうことでお互いの心を動かしたい。壁打ちをすることで、はっきりとした手応えを感じたい。

 


その人そのもの
を生きる人

その人がその人らしく生きる。これってとても、パワフルだと思っています。これが簡単なようでいて、なかなかそうもいかない。すでに社会的評価を得ていたり、一見、目的を達成しているように見えることがあるけれど、「何か他にやらなきゃいけない」ことがあるように思えて仕方ない。

本当はワクワクすることに時間を割きたいけれど、今は立場上その気持ちに蓋をして仕事をしていることも多い。何らかの壁にぶつかった時、乗り越えるための処世術を一度手に入れると、それが成功体験となり、どうしても無心に動いてしまう事がある。

それは、与えられた環境の中でどう生きるかを考え、選択した結果。諦める経験に繋がることもあるし、スキルセットとして得意なことに繋がることもある。どんな手に入れ方であれ「自分が最も輝いている」と思える何かを、一緒に探り当てていきます。

方法はズバリ、じっくりと対話を重ねることです。

すっかり忘れていた原体験や価値観に光を当てることによって深い納得感が生まれ、いまの選択とこれからの方向性をありたい姿に繋がっていくと考えています。自分自身と繋がり直すこと。きっと、見える景色も変わります。「自分の本質」にフォーカスして生きる人と一緒に走りたい、と思っています。


馬たちの隣で、昇ってくる朝焼けを見つめていました。自然の前で、馬たちの前で、私たちひとり一人が、ただ心の中を静かにしていた。向き合うことって、一人でできる時もあるし、仲間とすることもできる。自然の前でも。いろんな方法がありますね。

 

一緒に歩く仲間として

私たちスティルウォーターが成し遂げられるプロジェクト、仕事、作品作りはこの先いくつあるだろうと数えてみます。想像できる数には限りがあり、メンバーの人数も、マンパワーも、重ねている年齢も、全て総合的に鑑みてもおそらく数は知れているでしょう。

だからこそ、出会う人と本質的に関係性を深めることを大切にしたい。その人が成し遂げようと社会に向かって提案することに共感できたならば、一緒に深めていきたい。何度だって壁打ちをしたい。なぜなら、それが、私たちが目標にしている「社会の感性を豊かにしていく」近道だと思うし、大きく拡めていく手段だと思うから。

 

ぜひ、ご興味がある方は、インタビュープログラム/コミュニケーションデザインの説明を一度読んでみてください。ご自身だけでなく、あなたの周りにいる大切な人や信頼しているブランドや組織の中にある、可能性を一緒に見つめていけるかもしれません。

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